ちょっと、ここのところ、ブログの内容が沈みがちだけれど、お許しを。
今のマンションには、長く暮らしてる。
周囲環境は住みやすいし、居心地も悪くないし、ご近所さんにも悪い人はほとんどいない。
マンションの管理会社さんや大家さんもいい会社・いい人。
長く暮らしていると、自分のお気に入りの飲食店とかも増えてきて、顔見知りもちょいちょいとできてくる。
あまり人付き合いは上手ではない自分だが、それでも、ちらほらと…いいことなんだけれどね。
で、新型コロナウイルス騒動で営業自粛や時短短縮をしているお店も多いんだけれど……
時々、お伺いしている、おいしいお刺身や日本酒をだしてくれる居酒屋さんがある。
大将と女将さんは静岡県からやってきたおふたりで、もともとは和食・お寿司屋さんを営んでいたそう。思い切って、神奈川県へやってきて、今の場所にお店を開いたんだそうだ。
ところが、この騒動で営業自粛せざるを得ない状況になって、4月上旬からお店を閉じていた。再開は未定で、お店の前にもその貼り紙がずっとあったのだが……
「4月下旬から、時短・営業縮小ですが、お店、開けます」
のお知らせがやってきた。
そこで、時間を合わせて、先日、お伺いしたきた。
ドアを開けると、大将の元気なお出迎えの声に、女将さんの優しい笑顔。
常連のおにいさんがひとり、カウンターにいらっしゃる。
「よぉ、久しぶりだな」
「はい」
テーブルの間も、いつもより開いている。店内も風通しをよくしてあり、アルコールで手指の消毒をしてから、ようやく、マスクを外す。ああ、開放感(笑)
いつものように、女将さんに日本酒を選んでもらい(日本酒初心者なもんで)、かわいい器に盛られたお通しをいただきながら、メニューを眺めて…ああ、これだよなー、これ。つい最近までは、これがふつうだったんだよ。日常だったんだよ。
で、大将や女将さん、常連さんたちと色々と話しをしてきた。
その中で、飲食店経営者のホンネというか、今の気持ちというものが垣間見えた気がする。
自粛、自粛と世の中が騒いでいるのは理解するし、そうするべきだとも思う。
だけど、僕たち飲食店だって、自分たちの生活とお店を守るためには仕事をしないとならない。
長期戦・持久戦になるのはもう、決定しているわけだから、それらと折り合いをつけながら、手探り状態ながらも、店を開けることを決めたんだ。
世間的にも、おいしいものを食べたい、おいしいお酒を飲みたいっていう気持ち、あると思うんだ。
でも、食べること・飲むことを我慢するのは、自粛じゃないし、本末転倒なこと。
食べることは生きることだからね。
僕たちも、お客さんの顔を見たい、おいしいものを食べて、おいしいお酒を飲んで、喜んでくれる笑顔をみたい。もともと、僕も嫁も、そういう思いでお店をやってきた。
半月の間、家で待機している間、ずっと悩んできたし考えてきたけれど、それだけじゃ埒が明かないんだよね。
こういう非常事態の時に飲食店を開けるには、色々制限があるけれど、それをクリアして、ルールを守り、おいしいものを提供する。それが、僕ら飲食店経営者の「やるべきこと」なんだとも思っているよ。
キッチンカーを持っているお店はそれらを有効活用すること、僕らのような魚介類を扱う店も、気を付けるところをしっかり気を付けて店を開けること。みんな、お互い様なんだからさ。
だから、この先も手探り状態だけれど、出来る限りのことをしていくつもり。だって、この先、まだ長いんだもん。慣れるっていうわけじゃない、慣れちゃいけないことでもある。だけどね、それをしっかり踏まえて、うまく「つきあっていかないと」ならないんだよ。
大将とのおしゃべりの一部を要約させてもらった。
これは、たぶん……大多数の飲食店経営者の方の気持ちだと思いたい。
だけど、中には、ルールを守ってお店を開いたり、キッチンカーで巡回しているのにもかかわらず、身勝手な正義感を振り回し、飲食店に嫌がらせとか貼り紙とかを平気でやていく輩もいるらしい。
世も末だわ、本当に。
前のブログにも書いたが、医療系はもちろん、流通や生活基盤のインフラ系、私が勤務しているライフライン系などの動きをすべてストップさせろというのか?そんなことしたら、世界が崩壊するということを理解できない人がいるってのが、私にはわからない。
もし、それらを止めてしまったら、どうやって生きて行くのか?どうやって食料品を手に入れるつもり?そんな単純なことが、どうして理解できないの?
なんだかな……本当に。
「お互い様なんだよ。こういう時こそ」
ふだん無口な、常連のおにいさんがぼそっと呟いた時、私も女将さんも、そこにいた常連さんも含め、みんなが頷いた。
綺麗ごとを並べているだけだって?それだけじゃ収まらないって?
そうじゃないでしょう。
自分の考えだけで正義感を振り回し、互いに足の引っ張り合い、重箱の隅のつつきあい、自分のストレス発散のためだけに、店に勝手な貼り紙をする、SNSで叩きまくる……そんなことをしている場合ではないよね?
少なくとも、今は、この長期戦になる騒動を、どうやって乗り越えるか、知恵を出し合い、自分たちが出来ることをしていく。
それを優先させる時ではないのかなと思う。
まったく……震災時にも思ったけれど、こういう非常時には、個人個人の本性が見られるものだと、つくづく、思うね……
ちなみに、先ほどの大将のお店でも、期間限定でお持ち帰り商品を出してくれる。
しっかりした、小さな寿司桶に、10種類ものお酒のアテをてんこ盛り!しかも、お値段は1500円!さらに、寿司桶は返却不要だという。寿司桶……って、これ、イマドキのペラペラじゃなくて、しっかりした、私が小さいころに時々見た、しっかりした造りの寿司桶だぜ???
「え?1500円?高くないか?」
って思うかもしれないが、絶対に1500円以上のボリューム。常連さんたちと、
「もう少し値上げしたっていいじゃん」
と言ったら、大将はこう言った。
「いいんだよ。だって、この寿司桶は、静岡で店をやっていた時に購入して、ずっと倉庫に眠っていたんだし、こういう時にこそ使うものだと思うし。刺身や魚のほどんども、僕の親戚からのものだからさ(大将のご親戚が漁師さんなので、市場を通さず仕入れができるものがほとんどなのだ)。いいのいいの」
大将の言葉に、女将さんもニコッと笑って、
「おいしいもの、食べて欲しいからね。私たちができるのは、それくらいだから」
大将の心意気、女将さんの優しい気持ち……
だったら、私たち利用する側も、それに応えたいじゃないですか。
全国の飲食店経営者のみなさん、応援してます!
ルールやマナーを守り、厳しい状況でも私たちにおいしい食事を提供してくれることに、感謝します。
みんなで乗り越えないとね。