日本で未承認の抗がん剤は、当然、保険が効かない、それが大抵、ひとつ100万円単位で、下手すりゃ一か月で治療費が一千万円を超す場合もある……
というお話しを読んだ。
まぁ、いろんな意見があって然りのことなので、喧々諤々になるのはわかっているのだが……
ここから先は、私個人の考えによるいち意見なので、軽く読み流していただきたいと思う。
時々、稀に……だが、
「抗がん剤治療なんてしなくていいからね」
「意味ないじゃん。抗がん剤は逆にがんを引き起こすんだから」
などといった意見が散見される。
こういうのを読んでいると、ため息というか、勝手なことを言う人っているもんだな〜と、思わず毒を吐きたくなる。
いろんな意見があってもいいことなんだけれど……過去にも何度も書いたけれど……でも、
「そういうことを書いているアナタ、あなたは抗がん剤治療、経験したことがありますか?」
と、問いたくなる。
いや、いいんですよ、ご自分の考えで。
だけど、実際に治療を受けている側としてみれば、これは非常に難しいところであり、実際問題としては、最終判断は医者でもなんでもなくて、患者自身の判断になるとしか言いようがないのだ。
とにかく、薬品代・治療費は高い。
それでも、今は保険会社やらなにやらである程度は補ってもらえるものも増えてきたが、でも、根本的に非常に高い。
私自身、社会保険を使っても、例えれば、そこそこ、グレードの高い車両……乗用車ね……が、1台から2台は購入できる金額がかかっている。
抗がん剤治療費、ぶっちゃけると、私は1回の治療で数万円単位の支払いをしていた。そのうちの薬品代は、とにかく診療得点が高い(今も領収書を見ると、あまりの高さに目が回る)……ただし、最初の投薬は、2泊3日の入院が必要だったから、それ以上、経費がかかっていることにもなるが……それが6回……(遠い眼)。
ほかにも副作用による、急な通院などもあったから、とにかく莫大な医療費がかかっている。
今も月に一度は病院に通っているから、数千円ではあるが、しっかり、かかっていることになる。
それでも、自分が決めたことだから、私は続けた。
おかげさまで、現在は数値もそこそこ、安定していて、若干の差はあるけれど、とりあえずはクリアしてきている。
でも、いつ、再発するか、転移しているか……わからないのがこの病気。
だから、今でも通院しているし、血液検査やCTなどもきちんと定期的に撮影している。
自分の生死に直接、関係していることだから、慎重になるのも当たり前である。
このブログでもよく書いていたが、あれほど「矛盾した」治療はないとも思う。
治療という名の地獄と言ってもいい。
細胞レベルで効いていく薬なので、正常な細胞すら、破壊していく=副作用になる。
もちろん、がんの種類・進行具合などで薬は色々と変わってくるし、抗がん剤投与の回数も違う。でも、そんなことは関係なく、本当にあの治療は「苦しい」のだ。痛み、吐き気などの肉体的な苦しさは、想像を絶する。文章では表現しきれない。
実際、あまりの痛みに耐えかねて、挫折する人もいるというのだから、どれくらいの苦しみか……少しは理解してもらえるだろうか。私自身も、
「いっそのこと……このまま……!もうやめたい。痛い、苦しい!!」
そういう気持ちすら、過ったことも、ここで初めて書いておく。
「そんな辛い思いをしてまで、治療する必要あるのか?」
という意見をぶつけられたことがあるし、今も問われることがある。
その時に、私はこう答えている。
「言葉は悪いが、病気の経験をしてみないと理解できないよ。あとは、自分自身が決めたことだから、これからも治療は続ける。自分が死ぬまでのおつきあいなんだから」
がん患者の集いなどでも、この話はよくあがる。
通っている病院の、がん患者の集いに初めて行ったとき、泣きながらこの話をしたら、諸先輩方がみんな、頷いてくれた。
「わかる、わかる」
「無責任なことを言う人はいっぱいいるし、わかってくれとも思わないが、罹患したからこそ、わかることってあるよねぇ」
みんな、経験してきたことでもあるのだ。
もちろん、つらいことを黙っている人もたくさんいる。
私はこうして書いたり、時々、話しをしたりするけれど……世の中にはいろんな人がいるうのは、わかっているつもりだ。
前にも書いた。
「私は明るいがん患者、がんサバイバーでいたい」
と。
日本で未承認の抗がん剤を使ってまで治療する人がいるというのは、わからないことはない。
でも、一般的な庶民である私にはその金額は出せるものじゃないし、万が一、未承認の抗がん剤で「なにかあっても」責任を負うのは、患者自身なのだ。
なにがあってもいい、金額なんぞ、いくらでも出す。それでもいいという「相当の覚悟」は必要である。
だから、先ほども書いた通り、治療を受けることを決めるのは、医者でもなく、家族でもなく、患者自身なのだ。
海外で使われている薬を、とっとと日本でも承認してくれという声が上がるのも、自然なことだとも思うよ。
だけど、それだけの金額を出せる人って、どれくらいいるのか?
薬の開発費だって、莫大なものだから、高額になっているのも事実だろう。
ここがすごくポイントだと思うのだ。
医療保険を使ったって……高いものは高い。
「患者の足元を見ている気がして嫌」
という意見もある。これもわからんことはない。
あとは……これも重要な部分だと思うのだが、治療しながら仕事をしたくても、なかなか難しい。そういった環境はなかなか整っていないし、今の日本では整えるとしても、なかなか進んでいないこともあるこのあたり、日本は、まだ充分、理解があるとは決して思ってはいない。
抗がん剤なんて必要ないという発言をする人の中で、どれくらいの人が実際に治療をうけているのかなんてのはわからないが、でも、やはり、一度経験した人の大多数は、こう思っているはず……である。
「抗がん剤治療が無意味なんてことはない。少しでも、意味があるからこそ、治療を続けるのだ」
私は……少なくとも私は、抗がん剤治療は無意味だとは思っていないし、これからもきっと、思わないだろう。
だって、その治療のおかげで今、こうしていられるのだから。
命を繋いでもらったのだから。
明日は我が身。
もし、突然、がん宣告を受けたら、あなただったらどうしますか?
これを考えれば、安易に、無責任なことは決して、言えないはずだと、私は思います。
いざ、自分がその立場になった時、人は絶対に……一度は立ち止まってしまうはずなのです。
現在進行形で、身をもって経験しているからこそ……私は、そう思っています。